【小論文を学ぶ】読解スキルと作文スキルを向上させる「面読み」と「概念の埋め込み」

「さて――」名探偵は容疑者同士のアリバイの不整合性から事件の真相を導き出した。

こんにちは、たわら(@Whale_circus)です。

新しい本を読んでも、言いたいことがぼんやりとしか理解できない、という経験は僕だけではないはずです。おそらくこんなことを主張したいのだろう、というふうに理解はできます。

しかしその本の内容を他人に説明するときに、吸収したはずの知識は頭を使ったという読後感の中に漂うだけで、明確に言葉で捉えることができません。

それは情報を構造的に理解していないのが原因です。著者が説明する知識同士の関係性を立体的に把握していないためにどこから説明すればいいのかがわからなくなってしまうのです。

長尾達也「小論文を学ぶ」(2001 山川出版社)では、小論文対策として必要な読解方法と論文作成能力を「面読み」「概念の埋め込み」という言葉で見事にわかりやすく解説しています。この2つは小論文という枠を超えて、あなたが何かを理解する際に役立つ有効な方法に違いありません。

 

1 「面読み」で読解能力を向上させる

「面読み」とは小論文の読み取り方法の著者独自の名称であり、比較対象として「ライン読み」があります。読解をする際に、一文一文読んでいくのが「ライン読み」。一般的な読み方ですね。

対して「面読み」とは、一文一文読む点では「ライン読み」と同じですが、重要概念に着目し、それらの関係性の立体的な理解を念頭に置いて読解する方法を指します。

一方、面読みとは、紙面全体(頁全体)を一つの面と考え、そこに展開されている思想を構造的理解のもとに読み取ってゆく方法である。

長尾達也 2001 「小論文を読む」pp8

具体的には文章を読みながら重要概念に印をつけることを推奨しています。

キーワード(重要概念)が現れたときにすかさず印を付け、こうして蓄積されたキーワード群の間の意味的関係を構造的に解読してゆくのである

上掲 pp8

ちなみに、キーワードかどうか判断する基準として、「その概念の出現頻度」と「筆者の力の入れ具合」に注目するようにアドバイスしています。

この「面読み」を習得すると、はじめて文章全体の議論点や著者の見解が理解できる、と長尾は指摘しています。重要概念につけた印を読み返し、それらを論理的に並べることで文章全体の要約になるのです。重要概念の洗い出しをせずには文章を要約することはできないということですね。

 

2 「概念の埋め込み」で作文能力を向上させる

「面読み」は文章の議論や著者の主張を理解するために必要な読解スキルです。この能力を身につければ、小論文を書く方法もわかります。読解で身に付けた方法を逆方向に展開するのです。

いくつかのキーワード(重要概念)をあらかじめ用意しておいて、それを適所適所に論理的に埋め込んでゆけばよいのである

上掲 pp8

さらに著者は小論文の成り立ちについて重要な指摘をします。

小論文を書くというのは、論理を叙述することである前に、概念を提示することなのである。

上掲 pp12

 

文章を書く際に必要なことは、自分がどんな意見(論理)をもっているかを検討することではなく、どんな「概念」を使えばよいかを考えることである。

上掲 pp13

確かに新鮮な意見や特別な視点というのは、ある問題にあてはめる概念選びの新鮮さや持ち出す概念の質に関係していることに思い当たります

学問のの進歩とは新しい概念の発見であるとも言えます。概念に着目する重要性は言われてみれば、当たり前のことかもしれません。

つまり、文章を書いたり、主張したりするにはまず概念をどれだけ手元に用意しているか、その概念の質はどれくらいか、概念同士の関係性を熟知しているか、に焦点を合わせる必要があります。

どうやって必要な概念群を学ぶか? それをカテゴリ別・時系列ごとに「小論文を学ぶ」では詳細に解説しています。

 

3 読解・作文能力を超えて応用できる

読解スキルを向上させる「面読み」と文章作成スキルを向上させる「概念の埋め込み」は情報に接するときにはいつでも使える技術だと僕は考えます。

例えば他人とコミュニケーションをしている際には、一言一言に注意して反応する(ライン読み)のではなく、結局のところ何がいいたいのかを理解するような(面読み)姿勢をとることができます。

どんな概念に基づいて意見を組み立てているのか、概念同士の結びつきは有効かどうかなどと考えることができて、相手との議論を深めることができるでしょう。

また、「面読み」を抽象化すれば、要素ではなく要素の関係性に注目することになります。人間ひとりと接するときにも応用できます。言動ひとつひとつ、行動ひとつひとつに着目するのではなく、それらの関係性を立体的に把握することで、より対象者の理解が深まる。さらに要素にいちいち反応しないように努めることで、感情のエネルギーの浪費を回避できるので、こちらの精神衛生も快適になるでしょう。

集団の「面読み」も可能です。組織ひとりひとりに着目するのではなく、ひとりひとりの関係性、すなわち権力、規範、暗黙の了解、などを理解することで組織を構造的に把握することができます。

要素ではなく関係性に着目するのは、いろんな場面で応用が効く思考法です

ブログ記事も「概念の埋め込み」を意識して執筆していきます。

 

読んでくださったかた、ありがとうございます。

たわら