【自立とは他者への依存の脱却ではない】安冨歩「生きる技法」の「自立」について

「さて――」名探偵は母親が戸棚に隠したチョコレートを難なく見つけた。

 

こんにちは。たわら(@Whale_circus)です。

ある日ネットサーフィンをしていると安冨歩という人物を知った。「「あなたが苦しいのは社会システムが狂ってるからです」東大教授・安冨歩の発言になぜ共感が集まるのか」と題されたヤフーニュースです。

「必要最低限の金」と「友だち」。このふたつがあれば、なんとかなる、というよりそれが「人間が生きる」ということなのです。多くの人は、無意識に「自分のなかの最低限」を引き上げていってしまうので、ずっとお金が足りず、そのうえ、友だちがひとりもいません。

僕が知りたかったことを知っているかもしれない、と感じた。人生を生きる上で見過ごしてはいけないことを指摘している人なんじゃないか。その在処を強風の中で大声で叫んでいるんじゃないか、と。

興味を抱いてしまった人にいつもそうするように、著作を買い集めて読み始めました。

今回は「生きる技法」より、そのもっとも大切な「自立」について紹介ます。そして思うところについて語ります。

自立とは依存である

依存しないと生きていけない

「自立とは依存することだ」 これを著者は「生きるための根本原理」として紹介します。経済学者中村尚志氏のこの発見はコペルニクス的転回であり、経済学の歴史上の最大の発見である、とも評しています。

人間は依存して生きる存在です。赤ん坊は母親に依存していますし、大人だって生活する上で、友人、家族、会社などに依存しています。

それはわかるけど、自立とは関係ないだろう、とあなたは思うかもしれません。自立ってのは独り立ちってことだから、依存していたらダメだろう、と。

その考え方自体が間違っていることを安富氏は指摘します。

 

依存先が減ると従属する

依存する存在を減らすことこそが自立、という考え方に従うと、当たり前ですが、依存先が減ります。しかし人間は依存なくしては生きていけないので、結局のところ、少数の他者に依存することになります。

ここに問題が生じます。「もうお前の面倒は見ない」なんてその他者に言われたら、あるいは示唆されたら、どうしたらよいのでしょうか。その人のことばかり考えて、都合のいい振る舞いをしなければ、と考えてしまいます。

つまり、依存する相手が減ると、人はより従属状態に陥るのです。助けてもらってはいけない、自分でなんとかしなければ、という考えそれ自体が、あなたを従属状態にしてしまう原因なのです。

 

助けてくださいと、言うのが自立

自立するということは、他者への依存を減らすことではありません。では自立を達成したはどんな人なのでしょうか。

自立した人というのは、自分で何でもする人ではなく、自分が困ったらいつでも誰かに助けてもらえる人であり、そういった関係性のマネジメントに長けている人のことだ、ということに気づきました。

「生きる技法」安冨歩 2011 青灯社 pp33

もちろん頼りに頼って、助けられないと怒る人は、未熟だと指摘しています。そしてこうも指摘しています。困っているのに助けを求められないのも、また未熟だと。

つまり、助けを求められるとき、口に出してそう言えたとき、あなたは自立しているのです。

 

頼ることができないと問題が生じてしまう

ハラスメントを受けても行動できない

自立ができていない状態、すなわち少数の他者に従属している状態だと、人間関係に問題が生じます。例えば、ハラスメントから逃れにくくなります。この人に嫌われたらやっていくことができない、などと考えてしまうのです。奥さんから受けていたモラルハラスメントを回顧し、安冨氏は語ります。「都合の良い部分のみを切り取られ、他の部分は徹底的に攻撃される、という状態に陥りました pp29」と。

 

環境問題や働き方にもつながる

環境問題で考えれば少数の存在へ依存の危険性を理解するのは難しくないはずです。もともとは石油や石炭には限りがあるから、原子力エネルギーで発電をしよう、という発想だったのですから。原発の安全性についてはここでは考えませんが。

また、現在話題の副業の動きも、収入の依存先を増やすという観点からすれば、自立につながる発想です。

社会学ではサードプレイスという概念があります。家庭(ファーストプレイス)でも、職場(セカンドプレイス)でもない居心地の良い場所を指します。現代社会では、行きつけのカフェやこじんまりした居酒屋、または趣味コミュニティなどが当てはまるでしょう。自分のアイデンティティを確立できる場所を増やすことは、自立につながるのです。

 

依存できる世界観を増やそう!

小説、映画、音楽の世界観

心から尊敬できる友人、居心地のよい場所など、自分が頼れる存在を増やしましょう。僕が力強くおすすめするのは、心惹かれる小説や映画などを見つけることです

それは自分が依存できる世界を増やすことにつながります。もし幸運にも見つけることができれば、あなたの生涯にわたって強い見方になってくれます。現実がいやになれば、その世界に逃げ込み、その住人に力を分けてもらえます。

その世界が提供してくれるパワーを見極めて、いろんな世界を心のなかに持つことができれば、タフに生きていけるに違いありません。もちろん最後にはこちらに戻ってこなければなりません。村上春樹がいうところの、赤い血が流れる世界に。

 

素晴らしい小説の要件

読者が依存できる世界を立ち上げる、それは素晴らしい小説のひとつの要件だと僕は考えます。読者が住み込み、特殊なパワーを身につけ、そして現実へ気持ちよく戻れる、そんな小説を書けるように精進します。

困ったら助けを呼びましょう。甲本ヒロトがストレートに叫ぶように

抱きしめてくれ 一晩中

「ペテン師ロック」ザ・クロマニヨンズ

 

読んでくださったかた、ありがとうございます。

たわら