【「空気」の正体は流動化した「世間」】「空気」の正体を突き止め、その機能を把握して、そこから抜け出し「社会」に出会おう(下)

「さてーー」オーダーしたコーヒーをファミレスの店員が運んでくるまでに、名探偵は女友達の彼氏の嘘をあっけらかんと暴いてしまった。

こんにちは、たわら(@Whale_circus)です。

前回は「世間」を鴻上尚史著の「空気」と「世間」(2009 講談社現代新書)から学びました。

「世間」とは利害関係のある人々の全体であると鴻上は説明しています。この「世間」は彼らの利害関係に気をつけておけば、経済的セーフティーネットとして機能していました。しかし都市化、経済のグローバル化、精神のグローバル化によって、「世間」は弱体化しています。そして、「世間」が流動化した結果、そこに「空気」が生まれた、と著書は考察しています。

世間を成立させるには、5つのルールがあります。贈与・互酬の関係、長幼の序、共通の時間意識、差別的で排他的、神秘性の5つです。

詳しく気になる方がいらっしゃったら、下記の記事へどうぞ。

【「空気」の正体は流動化した「世間」】「空気」の正体を突き止め、その機能を把握して、そこから抜け出し「社会」に出会おう(上)

この本のメッセージは、「「空気」とは「世間」が流動化したものであり、もしその場がつまらないならば、「社会」に出て、複数の共同体に属するべきだ」です。

今回は「空気」に焦点を当ててそのメッセージにたどり着きます。

そしてたどり着いた先に、安冨歩の「自立」の概念につながります。

1 空気とは世間が流動化したもの

1空気が生まれたわけ

そもそもなぜ空気が生まれたのでしょうか。それを考えるにはそもそもなぜ世間が存在したのかを考える必要があります。どんなことにもあてはまりますが、そこに何かが長い時間存在していたのは、誰かが必要としていたからです。つまり、日本人は「世間」を必要としていたのです。

その理由はまず経済的セーフティーネットとして機能してきたからです。「世間」=「共同体」のルールさえ守っていれば生活は守られたのです。だから、年上を敬い、贈られたら贈り返し、先祖から伝わるしきたりを重視し、みなで同じ場所で同じ時間を過ごし、決まりを守らない連中を攻撃するのです。自分たちを守っているものを守っているのです。

ですが、その共同体は力を弱めています。都市化による人口が移動し、企業はリストラを敢行し、メディアは現在の日常より魅力的なライフスタイルを紹介します。従来の共同体は力を弱め、人々は今とは別の日常生活を望むようになりました。

そして同時に人々は迷い始めてしまいます。うっとうしいけど自分たちを守ってくれた「世間」が弱まったいま、何を支えとして生きていけばよいのか、と。そこで登場するのが「空気」だと鴻上は説明します。

 

2 「空気」とは「世間」が揺らいだもの

世間には5つルールがあります。一つでも欠けると世間は成り立ちませんが、そこには「空気」が生じます。

具体例として政治家1年生の集団を紹介します。彼らだけで集まると、「世間」は形成されません。なぜならお互いの序列がわからないからです。年齢、学歴、社会的キャリアがばらばらだからです。しかしボス政治家が現れ、彼との関係でそれぞれの政治家が序列化されると、会話がスムーズになります。わかるでしょうか、この感じ?

「世間」が形成されないとそこに「空気」が生まれると、著者は語ります。もう一度、政治家1年生の集団を考えます。

彼ら彼女らは、無作為に集められた無目的な集団ではありません。

全員が同じ集団に属していると思っています。つまり、他の集団に対して、「差別的で排他的」にならざるを得ないと思っているのです。

そして、これからも、この集団の中でやっていくと暗黙に思っています。つまりは「共通の時間意識」のもとで生きるだろうと考えているのです。

全員が集まることで、何かそれ以上のことがなし遂げられるような気がしています。この集団は、なにか、日本を変えるとてつもない力を持っていると「神秘性」を感じのです。

「「空気」と「世間」」 鴻上尚史 2009 講談社現代新書 pp96

彼らは大物政治家が彼らを序列化するまで、その場の「空気」を読むはずです。そして、自分たちだけで序列化しようと具体的にこんな風に行動するのです。

もしそういう飲み会があれば、そこでは、激しい「長幼の序」を決める場たるが水面下で行われるはずです。都会出身の方が上なのか、派閥のボスの名前を何度も出して寵愛されているというアピールがうまい議員の方が上なのか。身振りや雰囲気、意味深な素振り、表情、さまざまなもので「空気」を作り、その「空気」を固定しようと、言葉にならない戦いが続くはずです。それは議員全員が争うことが好きなのではなく、「長幼の序」が決まらないと、日本人は円滑なコミュニケイションがそもそもできないからです。

「「空気」と「世間」」 鴻上尚史 2009 講談社現代新書 pp99

あなたもはじめて出会った人としゃべるとき、意識的にせよ無意識的にせよ、相手が自分より上か下か、を考えていませんか。

上記のように、「世間」のうちいくつかのルールが欠けてしまうと、「世間」がゆらぎ変化し続ける「空気」が生まれるのです。そして「世間」が流動化している現在では、いたるところに「空気」が発生しているのです。「空気読めよ」という言葉がはやるわけです。

 

3  脱出方法 何で自分を支えるかえらぶ

1 共同体を見つける

もしあなたの属している集団の「世間」や「空気」がうっとうしいのならどうやって逃げたらいいのでしょうか。

その時の戦い方は決まっています。

抜け出すことのできない「差別的で排他的」な「世間」では、最小のエネルギーで、その「世間」と「空気」の逆鱗に触れないように振る舞うだけです。表面上は従順なメンバーを装うのです。

「「空気」と「世間」」 鴻上尚史 2009 講談社現代新書 pp245

そして最小のエネルギーを使って、あなたが心からワクワクできるような別の共同体を見つけるのです。「世間」を飛び出た世界=「社会」に出てゆくのです。

僕らにはインターネットがあります。簡単に他人とつながることができます。こうやってブログを書いているたわらとあなたが出会ったように。そこで自分にあったコミュニティを見つけるのです。ネットは広大です。きっとあなたに合う共同体が見つかるはずです。

 

2 あなたがワクワクする共同体を複数見つける

属する共同体がひとつではいけません。できるだけ複数持ちましょう、と鴻上尚史はいいます。ひとつだけの共同体に属すると、その共同体が「差別的で排他的」だった場合、結局苦しめられてしまうからです。

つまり安冨歩がいうように少数への依存とは隷属になってしまうのです。したがって、鴻上のアドバイスは安冨の生存戦略と重なります。

複数の共同体に属するのです。中学校の共同体、高校の共同体、バイトの共同体、趣味サークルの共同体、地域共同体などなど。

あなたが今を苦しいと思うのは、「世間」や「空気」を考えて生きているからなのかもしれません。自分の欲望に忠実に、複数の共同体に属し、自分を支えるものは自分で選びましょう。

【自立とは他者への依存の脱却ではない】安冨歩「生きる技法」の「自立」について

読んでくださったかた、ありがとうございます

 

たわら