あなたの人生にこんな風に僕の小説が登場してくれればうれしい

「さて--」名探偵は屋上へと階段を登りながらつぶやいた。

こんにちは、たわら(@Whale_circus)です。

僕はいつも妄想します。僕の小説がこんな風にこの世界で活用されたらな、と。

小学生か中学生か高校生か、男か女かそれ以外か。その人物は屋上から校庭を眺めている。

足元にはきれいにそろえられた靴が夕陽を浴びて影を伸ばしている。

地平線を求めて遠くを眺めるが、山やら高層ビルやら住宅街やら電信柱でその人物には見えやしない。

人生に救いなんてあるのだろうか、そう思ってその人物は手すりから手を離し、体重を傾ける。

目を閉じた瞬間に、その人物は名前を呼ばれる。

「これ知ってる? 最近読んだんだけど」あまり親しいとは思っていなかった友人の一人がある本を掲げる、遠くから叫ぶ。

そして、最初の一文を試しにその友人が大きい声を出して読んでみる。

「ーーーーーーーーーーー」

その人物は離したはずの手すりを再びつかむ。「なんなんだそりゃ」と。

「ーーーーーーーーーーー」

その人物は動けなくなっている。続きが気になり聞き入っているからだ。

興ざめして今から飛び降りる気もなくなってしまった。

「とりあえず最後まで読んでみてよ」友人は靴を履いたその人物に手渡す。

家に還って部屋の隅でこっそりとその小説を読み出した人物は困惑してしまう。

「こんなのありなのか。この程度でありなのか。こんな小説を書いているやつが生きてるのか」

小説をめくるページは止まらない。

次の日に書店に寄った少年は文庫本コーナーに小さな新刊のお知らせを見つけた。

来月にあの作者の新しい文庫本が発売されるようだ。

飛び降りるのはそれを読むまで延期しよう、とりあえず、とその人物は思った。

こんな風に僕の小説がいつか読まれればいいなと思う。

読んでくださったかた、ありがとうございます。

たわら