【はやみねかおる:名探偵夢水清志郎事件ノート】「さてーー」は物事が明確になる瞬間の到来を告げる予言

「さて――」名探偵は自己紹介を終えるとあっさりと謎を解いてしまった。

こんにちは、たわら(@Whale_circus)です。

子供の頃に夢中だったものは大人になっても心に残っています。これからも時間の振るいにかけられても残っていくことでしょう。

あなたの心には何が残っていますか。嫌な思い出があれば穴を掘って、バクテリアにじわじわと食べてもらってください。

今回は僕の記憶の中に椅子を用意されている彼について紹介しましょう。

ここ「クジラのサーカス舞台裏」に何度か訪れたことがある方なら彼を知っています。

いや、はじめてここを訪れたあなたももう彼を目にしています。

 

そう名探偵の彼です。「クジラのサーカス舞台裏」のもうひとりの住人。

「さて――」と声を出して事件を解決する彼こそが僕の心に昔から居座っている男なのです。

 

その彼の出自は、はやみねかおるが生み出したスーパースター「教授」こと夢水清志郎です。

1 スーパー名探偵 夢水清志郎

夢水清志郎はまぎれもない名探偵だった。小学生の頃に青鳥文庫でむさぼるように読んだ、はずだ。(いつ読んだのだろう、読んだという記憶しか残っていないが、、、)。村田四郎の絵は小学生だった僕の目を掴んで離さなかった。

身の丈190センチ、ヒョロヒョロのガリガリ。大食漢で常識がない。観察力が鋭く、人が見逃してしまうことは見逃さないが、記憶力が著しく欠如している。論理学を教えていた元大学教授。

亜衣・真衣・美衣の三姉妹とめぐる学校の怪談、島の伝説、修学旅行、怪盗との対決。どの物語も心躍りながら読んだ。

何よりも僕を惹きつけたのは彼の矜持(あるいははやみねかおるの矜持)と謎解きへの姿勢だった

かの名探偵は必ず謎を解くときにあるフレーズからはじめる。それが彼の矜持なのだ。

「さて――」

この文字に出くわすたびに、わくわくしたものだった。謎解きがはじまる!

どんな状況であれ、この言葉が物語に出てくるのだ。はやみねかおるの矜持でもあるのだろう。

 

かっこいい、そう僕は思った。目の前の現象にまどわされず事態の真相をいとも簡単に披露してしまう彼に会って、僕は思わざるを得なかった。名探偵になろう、と。

 

もうひとつある。それが謎解きへの姿勢だ。

 

彼にとって事件を解くのは難しくない。しかし謎はただ解けばいいものでもないのだ

彼は物語のなかで述べる。

 

みんなが幸せになるように事件を解く探偵こそが名探偵だ、と

 

電撃に打たれた。かっこいい、そう僕は思った。幸せの定義も、幸せになる方法もわからなかったけれど、そんな風に世界に接すればいいんだ、と心の底から思った。

 

そのときから、彼は僕の記憶の中に、勝手にソファを用意して寝転んでいる。

記憶の中の彼から生成されたのが、毎回記事の冒頭に出現する謎の名探偵だ。

 

2 「さて――」とは

どうしてこんなにも魅力的なのだろう。「さて――」。あなたももう言いたくなっているはずだ。想像してほしい。事件が起きた。誰かが悲しんでいる。謎は解けない。誰もが不安にかられている。すべてを知っているあなたをのぞいて。あなたはゆっくりと口を開くはずだ。

 

「さて――」と。

 

気持ちいいだけではもちろんない。それだけで記事の冒頭に彼は登場しない。

…やがて突然、すべての物事が彼の中で明確になった

チェーホフ

レイモンド・カーヴァーが好きなことばだ。僕もカードに記してコルクボードに刺してある。

名探偵が口を開く瞬間は、すべての物事が我々の中で明確になる瞬間の到来を告げる。予言なのだ。

僕が名探偵に記事の最初に登場してもらうのはそこに理由がある。この記事を読めばきっとあなたの中で物事が整理されるはずだ、と期待を込めて彼に登場してもらっている。

 

クジラのサーカス舞台裏は、僕だけじゃなく、名探偵もいるのだ。

よかったら彼に会いに来てくださいね。彼は毎日物事が明確になる瞬間の最中にいます。

 

読んでくださったかた、ありがとうございます。

たわら